ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-051
*村上由貴(岡大院・環境),三木直子(岡大院・環境),賀燕(岡大・農),小笠真由美(岡大院・環境),山中典和(鳥大・乾地研),吉川賢(岡大院・環境)
失水および生産に関わる葉のガス交換特性と通水を担う木部構造を踏まえ、乾燥に対するヤナギの木部通水機能の抵抗性を明らかにすることを目的とした。供試樹種としてSalix psammophila、S.matsudana、S.integra、S.cheilophilaおよびS.subfragilisを用いた。潅水を停止し、乾燥の進行に伴う木部の水ポテンシャル(Ψxylem)と水分通導度の低下の割合を求めvulnerability curveを作成した。また、葉のガス交換特性として環境制御下での最大光合成速度(A)、最大蒸散速度(Tr)および最大気孔コンダクタンス(gs)の測定と、生育環境条件下での日中の木部の水ポテンシャル(Ψx min)の測定を行った。木部構造として、材密度(Dt)と機能している道管の平均透水直径(通水量への貢献度を反映した道管直径;DH)を算出した。
乾燥に対し抵抗性が低いヤナギは、A、Trおよびgsが低く、Ψx minが比較的高い傾向が見られた。木部構造ではDtが低く、DHが大きい傾向が見られた。一方、乾燥に対し抵抗性が高いヤナギは、A、Trおよびgsが高く、Ψx minが低い傾向が見られた。木部構造では、Dtが高く、DHが小さい傾向が見られた。以上より、乾燥に対し抵抗性が低いヤナギは、光合成による生産性が低く木部構造的にキャビテ-ションを生じやすいのかもしれない。そのため気孔制御により樹体からの失水を抑制し、Ψxylemの低下を抑え、通水機能の損失を抑制していると考えられた。一方、乾燥に対し抵抗性が高いヤナギは、気孔制御を行わないためΨxylemが低下しやすいが、光合成による生産性が高くキャビテ-ションを生じにくい木部構造であるため通水機能を損失しにくい可能性がある。