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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-052

異なる光環境下での小笠原外来種アカギの病原菌に対する抵抗性

*加藤綾奈, 三浦千裕, 多和田良昭 (筑波大・生物資源), 小林勝一郎(筑波大院・生命環境), 石田厚(京都大・生態研), 山路恵子(筑波大院・生命環境)


小笠原は樹木の75%が固有種という貴重な森林生態系を有しているが、近年、アカギなど外来種の繁殖のため固有種が駆逐される現象が生じている。アカギが侵入を成功させた要因の一つには光変化に対する高い適応能力が挙げられるが、光環境の差異がアカギ実生の生残・成長や化学的性質に与える影響については明らかにされていない。本研究では、異なる光環境におけるアカギ実生の生残、成長及び枯死原因に着目し、実生の生残メカニズムの基礎的知見を得ることを目的とする。

2008年12月に小笠原父島アカギ林内に照度別にA及びBの2調査区(相対照度:2.97%、0.79%)を設置し、2009年2月〜7月に、生残数及び実生の枯死要因の特定を行った。病徴の見られた茎部は表面殺菌し菌を分離した。各調査区から健全な実生を採取し、新鮮重量、生育段階の測定、無機栄養元素分析、茎部のフェノ-ル性物質の分析を行い、実生の成長や化学的性質を評価した。

2009年5月の両区の生残率に差が確認され(A区: 27.7%、B区: 4.1%)、その傾向は7月まで続いた。調査期間を通じて、茎部の病気が主要な枯死要因であり、4種の糸状菌が病原菌として分離された。ギャップ下であるA区ではB区に比べ実生の成長量が顕著に増加し、個体当たりの無機栄養元素量ではA区>B区となる傾向が確認された。また、A区の実生の茎部には、抗菌物質であるクロロゲン酸類縁体がB区の1.1-2.6倍多く含まれていることが確認された。以上のことから、光環境の差異はアカギ実生の成長量、無機栄養元素量、抗菌物質量に影響すると示唆され、より明るい光条件は実生の病原菌抵抗性を増大させ、生残にも影響を与えたと考えられた。


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