ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-071
*村田直樹1, 岩永史子2, 田中浄1, Ailijan Maimaiti1, 山中典和2 (1鳥大院・農, 2鳥大・乾地研)
植物は糖類やアミノ酸などの様々な浸透調節物質を体内に蓄積することによって耐乾性を向上させていることが知られている。このことから外部からの糖類の投与が樹木の耐乾性の向上に寄与する可能性が考えられる。そこで本研究では苗木への糖類の点滴処理が苗木の糖蓄積量や生理活性に与える影響を評価することを目的として実験を行った。
点滴処理に用いる糖類として、脱水時に細胞膜やタンパク質を保護する機能が知られるトレハロ-スと植物体中で光合成産物の転流を担っているスクロ-スを選んで実験を行った。実験対象木には中国北西部において砂丘固定や塩類化土壌の修復などに用いられるスナナツメ(Elaeagnus oxycarpa)を用いた。蒸留水、150g/Lトレハロ-ス溶液、150g/Lスクロ-ス溶液を一週間継続して点滴処理し、その後十分に潅水したのち潅水を停止して経過を観察した。実験期間を通して苗木の光合成速度、クロロフィル蛍光(Fv/Fm)、葉数、樹高、地際直径を測定した。 実験終了後、サンプリングした葉のトレハロ-ス、スクロ-ス、グルコ-ス、フルクト-ス、マルト-スの含量を高速液体クロマトグラフィ-によって測定した。
結果、トレハロ-ス・スクロ-スの点滴処理によって点滴終了直後の葉中のトレハロ-ス・スクロ-ス・グルコ-ス・フルクト-スの含量の増加が確認された。また点滴終了から一週間後には処理間の差は小さくなっていた。トレハロ-スを処理したグル-プでは点滴直後から葉の変色や脱落などの顕著な障害が認められた。スクロ-スを処理したグル-プでは目立った障害は観察されなかったが、光合成速度やクロロフィル蛍光の減少など生理活性の低下が見られた。