ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-083
*横山将大(富大院・理工),和田直也(富大・極東地研)
現在、地球温暖化に伴う高山生態系の変化が懸念されている。そのため、気候変動が高山生態系に与える影響を検出することは急務であるが、両者の関係を考える上で、日本の高山帯に優占するハイマツ(Pinus pumila (Pallas) Regel)の生態を明らかにすることは必要不可欠である。そこで本研究では、ハイマツの当年枝の伸長様式を、ロジスティック曲線を適用して明らかにし、気候変化の影響の一つとして雪解け時期との関係を調べることを目的とした。
調査は富山県の立山山地において、標高の異なる4地点(天狗平,2300m;ミクリガ池,2400m;室堂山,2600m;浄土山,2830m)のハイマツ群落を対象に実施した。2009年10月から各調査地の個体識別したハイマツの主幹(n=20)に取り付けていた温度ロガ-のデ-タより、各個体の雪解け日を推定した(以下“融雪日”)。さらに、2010年5月から10月にかけて、各調査地における調査木の当年枝の長さを約一週間毎に測定し、ロジスティック式にあてはめた。求められた融雪日と、当年枝の伸長量や成長期間等の当年枝伸長成長に関わる様々な値との相互関係を調べた。
各調査地における融雪日は、ミクリガ池,浄土山,室堂山,天狗平の順で早かった。また、各当年枝の調査終了時の伸長量を調査地間で比較したところ、高い順からミクリガ池,天狗平,浄土山,室堂山となった。全個体込みにして、当年枝の最終伸長量と融雪日との解析を行ったところ、有意な負の相関を示した。しかしながら、各集団内について解析してみると、二つの集団において弱い正の相関を示し、傾向が逆であった。以上のような結果に基づき考察を行った。