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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-084

融雪環境の違いが稚樹の開葉時期に与える影響

*伊藤公一(鳥取大・院・農), 佐野淳之(鳥取大・農・FSC)


積雪下では、地表面付近の温度がほぼ0?Cに保たれ、雪面下40-50 cmの層にはほとんど光は透過しないため、雪面下に生育している植物が春先における外気温や日射の変化を感知するためには積雪から解放されることが必要である。しかし、森林内において雪解け時期の違いが林床に生育する稚樹に対してどのような影響を与えるのかについてはほとんど研究されていない。本研究では同一林分内で積雪量の異なる2つのサイトを比較することで、融雪環境の違いが稚樹の開葉時期にどのような影響を与えるのかを検討した。2008-2010年にかけて鳥取大学教育研究林「蒜山の森」におけるアカマツ林内において積雪量が異なる2つのサイトを設定した。融雪環境を把握するため最大積雪深と地表温度を測定し、樹高50 cm以下の落葉広葉樹の稚樹について、6段階の開葉度を用いて開葉段階を記録した。対象樹種は、クロモジ、オオカメノキ、ヤマウルシ、ウワミズザクラ、カスミザクラ、ヤマモミジである。

調査地における最大積雪深は2008年が158.7 cmと最も大きく、2010年にかけて年間約50 cmずつ減少していた。また、雪解け時期は積雪量の減少にともない2-4週間程度早くなった。稚樹の開葉時期は、2008年では5月2日前後であったのに対し。2009年では4月23日前後と10日程度早くなっており、雪解け時期の年変動によって稚樹の開葉時期が変化したと考えられる。2010年では、雪解け時期が最も早かったにも関わらず開葉時期は2008年とほぼ等しかった。これは、2010年における4月の月平均気温が他の年よりも2.3?C低く、雪解け後の低温によって稚樹の開葉が制限されたことが原因であると考えられる。これらのことから、稚樹の開葉時期は、積雪が多い年では雪解け時期に、積雪量が極端に少ない年では春先の温度環境に大きく影響を受けることが示唆された。


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