ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-090
*橋本啓史(名城大・農), 大畑孝二(日本野鳥の会・サンクチュアリ室), 礒井俊行(名城大・農)
里山の谷津田環境の小規模水田において冬期湛水をおこなうことは、どのような鳥類の生息環境を提供することになるのだろうか。愛知県の豊田市自然観察の森周辺地域の冬期湛水田(以下、冬水田;約640m2)、および隣接する慣行農法による水田(以下、慣行田;約1100m2)において、2010年1月-12月に午前中30分間と日没前後1時間の鳥類および翼手類の定点センサスを満月と新月にほぼあわせて約15日間隔でそれぞれ24回実施した。林冠よりも低い高度を飛んだ通過個体も記録したが、地上に降りた個体または上空で採餌行動をおこなった個体ののべ滞在時間を利用時間として集計した。
午前中の調査では、両水田の湛水期には、冬水田では10種56羽のべ23.5分、慣行田では11種40羽のべ8.5分、冬期湛水期には、冬水田では11種38羽のべ157分、慣行田では7種22羽(利用なし)が記録された。冬期湛水された冬水田でセグロセキレイなどが採餌を行っていた。セグロセキレイは慣行田にも水が入るとそちらも利用した。
日没前後の調査では、両水田の湛水期には、冬水田では10種81羽のべ160.5分、慣行田では10種73羽のべ128.5分で、冬期湛水期には、冬水田では16種77羽のべ172分、慣行田では12種53羽のべ22分が記録された。セグロセキレイのほか、ツバメやアブラコウモリが多数採餌に訪れた。マガモ、カルガモ、コガモは早春に冬水田のみが湛水されている時期にわずかであるが、冬水田を利用した。ツバメとアブラコウモリは夏季-秋季には冬水田と慣行田の両方の上空で採餌を行っていたが、冬水田の上空の方が利用個体数およびのべ利用時間が多かった。また、アブラコウモリは早春に冬水田のみが湛水されている時期に冬水田上空を利用した。