ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-097
長 雄一(道総研・環境研)
北海道南部及び中央部の農地における主要な景観である水田地帯で、冬期湛水農法(以下、冬水)・有機農法(以下、有機)・慣行農法(以下、慣行)別に、種あるいは分類群数及びその個体密度の計測を行い、モニタリング手法の検討を行った。
飛翔性・歩行性動物に関しては、捕虫網(直径36mm)を各月1回、各農法40回振って採取を行った。
水生動物を採取するために、20cm×50cmのプラスティック製方形区を作り、調査日ごと各農法5箇所に設置して、目視にて内部の生物を採取した。
土壌動物に関しては、土中に直径20mのパイプを10cmの深さに埋め込み、泥を採取し、4.75mm、2.0mm、1.0mm、0.5mm目合いのふるいを重ね(大きな目合いが上)、漉しとった。
飛翔性・歩行性動物においては、全体では58種(分類群)確認したが、もっとも種数の多い2009年7月において冬水17種、有機18種、慣行18種であり、6月及び8月を含めた種別密度を検討しても、目立った傾向がつかめなかった。
水生動物に関しては、2010年において、5月下旬から8月上旬まで計7回の調査結果によると、水面採餌性のアメンボ類は単位平方メ-トルあたり冬水で2.12個体、有機で2.93個体、慣行で1.56個体、水中採餌性ゲンゴロウ類で同じく冬水で2.12個体、有機で0.98個体、慣行で0.20個体であった。
土壌生物であるイトミミズの1リットルあたりの確認数は、2010年7月で冬水192個体、有機14個体、慣行1個体となった。その他に少数のドブシジミ科を中心とする二枚貝類等が観察された。
これらの結果から、各農法での差が最も顕著なのは、土壌動物のイトミミズ類であり、ゲンゴロウ類を含めた水生動物の餌資源として、生物群集に影響を与えている可能性が指摘できるが、その解明には実験系の設置等が必要であろう。