ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-102
*野上達也,吉本敦子 (石川県白山自然保護センタ-)
白山は高山帯を有する山岳としては日本における西限となっており、高山帯を主な生育地とする高山植物の100種を越える種が白山を分布の西限としている。白山の高山帯は他の高山帯を有する北アルプスなどの山岳から遠く離れていること、高山帯の面積が狭いことなどから、白山の高山帯の環境変化は多くの高山植物の生育に大きな影響を与えると考えられる。ハイマツ(Pinus pumila)は日本では高山帯を代表する植生で、高山帯に広く分布することから、その成長変化や分布域の変化は高山帯の植生の変化に影響を与えると考えられる。
ハイマツは夏季に成長し、冬季は伸長が止まり節ができるため、過去にさかのぼって、その年枝成長量と経年変化を容易に評価できる。白山のハイマツの近年の成長について把握するため、高山草本植物群落(雪田植生)の周辺部と風衝地に生育するハイマツについて、それぞれの植生ごとに3か所づつ調査地を設定し、年枝成長量と樹高を計測した。その結果、以下のことが明らかになった。
1)同じ植生タイプでは、年枝成長量の年変動に同調性がみられたが、異なる植生タイプとは同調していなかった。
2)高山草本植物群落(雪田植生)の周辺部の3か所の調査地のうち、2か所のハイマツは20年前に比べて年枝成長量が増大している。
3)高山草本植物群落(雪田植生)の周辺部のハイマツは、風衝地のハイマツに比べ樹高が高かった。
よって、白山では、風衝地に比べ高山草本植物群落(雪田植生)の周辺部ではハイマツは樹高が高いこと、ハイマツの成長量が増大してきていることから、ハイマツ群落の成長の変化によって高山草本植物群落(雪田植生)が縮小するなどの影響が出る可能性がある。