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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-109

物理化学性状の異なる農薬が水田生態系に及ぼす影響 -水田メソコズム試験事例

*早坂大亮,是永知子,五箇公一(国立環境研究所・環境リスク研究センタ-)


ポストCOP10の主要課題の一つとして、化学物質による影響評価と影響緩和が挙げられている。現在、農薬の生態リスク評価はOECDテストガイドライン(OECD 1984)に準拠した室内毒性試験によって行われているが、条件の均一な室内での結果が不確実性の伴う自然環境下に外挿できるとは限らない。今後の農薬リスク管理を検討していく上では、半自然条件下におけるより複雑なシステムでの実験を通じたリスクの妥当性の検証や情報の蓄積が重要となる。

そこで、本研究では、日本で広く使用されている水田用殺虫剤のうち物理化学性状の異なる2剤(イミダクロプリド、フィプロニル)を用いて、水田生態系に及ぼす生態影響の違いを、メソコスム試験により明らかにした。イミダクロプリドは水溶性が高く土壌吸着係数が低い一方、フィプロニルは水溶性が低く、土壌吸着係数が高い農薬であり、室内毒性試験では、フィプロニルの方が100倍以上試験生物に対する毒性が高いとされている。

試験期間は田植え期(5月)-収穫期(9月)までの4カ月間とし、動物プランクトン、底生生物、節足動物の種数・個体数及び植物の被度についてモニタリングした。モニタリングの結果、両薬剤で生物群集に対する生態影響に大きな差がみられた。イミダクロプリド処理区では、動物プランクトン及び底生生物がほとんどみられなかった。一方、コントロ-ル区とフィプロニル処理区との間には、生物群集に対する影響に極端な差は認められなかった。メダカの成長(体サイズ比:体重/体長)に対する影響は次世代まで見られた。

これらの結果から、室内毒性デ-タと野外試験結果では生物群集に対する生態影響に大きな違いが見られ、メソコスム試験による生態リスク評価の重要性が示された。


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