ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-114
*小原亮平,丑丸敦史(神戸大・発達)
Ecotone(環境移行帯)で植物種の多様性が高くなることは多くの研究で示唆されているが、その多くがαもしくはγ多様性について調べたものである。一方、代表的なEcotoneの一つである林縁環境では、方位や森林の状況が微環境の不均質性を高くすることが示唆されている。このことから林縁では多様な環境に応じてβ多様性が高くなると考えられるが、これまで林縁の集団におけるβ多様性をその隣接した集団と比較し定量的に示した例は少なかった。
本研究では、11の調査地で半自然草地から森林にかけてトランセクトを引き、トランセクト上で林縁から草地・森林にむかって0,2,4,8,16,32mの位置に1×1mコドラ-トを設置した。各コドラ-トで植生と環境要因(土壌水分・日照時間)を調べ、林縁からの距離とα、β、γ多様性の関係、またそれらの多様性と環境要因との関係を検証した。ここでα多様性はコドラ-ト毎の種数、γ多様性は各距離における総種数、β多様性は各距離における総種数/各距離における平均種数と植生の非類似度(Bray-Curtisの非類似度指数)で表した。
森林ではα多様性、β多様性ともに林縁に近づくにつれて高くなり、その結果γ多様性も林縁で高くなっていた。一方、草地では林縁に近づくほどα多様性は低く、β多様性は高くなり、その結果γ多様性は林縁に影響を受けていなかった。
森林・草地共にα多様性は、資源量(土壌水分量・日射量)に依存していた。また、植生の非類似度(β多様性)は環境の差に影響を受けていた。
このことから、林縁は常にα多様性が高い場所ではないが、その多様な環境からβ多様性が高い場所であることが示唆された。林縁の環境の不均質性は様々な場所で報告されているため、今回の結果は林縁の多様性に対する一般的な理解の一つであると考えられる。