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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-115

日本における魚類寄生虫Genarchopsis goppoの地理的分化と宿主特異性

*西村龍彦,浦部美佐子(滋県大)


Genarchopsis goppo (吸虫綱二生亜綱) は淡水生ハゼ類などを終宿主とする寄生虫である。第一中間宿主はカワニナ類である。感染実験と分子系統解析によって、琵琶湖水系のG. goppoには感染できるカワニナの種が異なる最低2種の隠蔽種が含まれると判明している。これらの隠蔽種はそれぞれ北湖の4地点と河川の2地点から発見されている。

琵琶湖水系のG. goppo個体群には他にも隠蔽種が存在する可能性がある。そこで、滋賀県内のG. goppoの遺伝子解析を行うと同時に、琵琶湖水系での、G. goppoの宿主利用の実態を調べた。それにより、琵琶湖水系のG. goppo個体群に新たな隠蔽種がいるか調べた。また、先行研究によって発見された琵琶湖の隠蔽種が固有種であるか検討した。

滋賀県内の河川および琵琶湖で宿主であるカワニナ類と魚類を採集し、得られたG. goppoの分子系統解析を行った。その結果、河川と琵琶湖内のチリメンカワニナから得たG. goppoの塩基配列は河川型隠蔽種と一致した。また、琵琶湖内のヤマトカワニナから得たG. goppoの塩基配列は北湖型隠蔽種と類似した。魚類から得られた虫体に関しては現在解析中である。

先行研究で行われた感染実験では、河川型隠蔽種はカワニナ、タテヒダカワニナ、ナカセコカワニナに感染した。しかし、今回の結果から、自然下では、河川型隠蔽種はチリメンカワニナにも感染することがはじめて明らかになった。従って、河川型隠蔽種の宿主利用の実態についてはより広範にわたる調査が必要であると考えられる。一方、北湖型隠蔽種は自然下でヤマトカワニナに感染することが分った。この結果は感染実験の結果と一致した。これより、北湖型隠蔽種は第一中間宿主として琵琶湖水系の固有種のみを利用する可能性が高く、琵琶湖内でもチリメンカワニナに感染しているのは河川型隠蔽種であることがわかった。


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