ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-117
*片渕正紀(東北大・生命),饗庭正寛(北大・苫小牧研究林), Sylvester Tan(SFC, Malaysia), Stuart J. Davies(CTFS, USA), 中静透(東北大・生命)
群集集合に関するこれまでの研究は、系統関係や形質値の分散から種の分布パタ-ンが中立説から逸脱することを示しており、群集集合におけるニッチに重要性を示唆している。しかし、これまでの研究の多くは種の在・不在デ-タを扱っているため、デモグラフィックパラメ-タ(e.g. 個体数、死亡率、新規加入数)が中立説による予測と一致するかどうかは、あまり検証されていない。中立説では死亡率と新規加入数は個体レベルで一定であることを予測している。
そこで本研究ではマレ-シア・ランビル国立公園の52haプロットに生育する約1200種の樹木の分布から観察されたデモグラフィックパラメ-タを用いて、(1)進化的背景はデモグラフィックパラメ-タに影響するのか?(2)有意にデモグラフィックパラメ-タが逸脱する分類群はいるのか?(3)個体レベルでデモグラフィックパラメ-タ間に予測されるような関係があるのか?について、検証した。
その結果、各パラメ-タには有意な系統的シグナルが存在し、進化的背景がデモグラフィックパラメ-タに影響することが示唆された。予測値より有意に個体数が多くなる分類群の存在が認められ、そのような分類群の数は予測されるよりも多かった。死亡率と個体数の間には正の相関、新規加入数と個体数の間の関係はセンサス時期によって変化した。特に、個体数の多い種の死亡率が低いという結果はニッチに依存した個体数分布パタ-ンがランビルの群集集合形成に重要であることを示唆している。以上の結果をもとにランビルの熱帯樹木群集における多様性の維持機構について議論する。