ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-121
*篠原耕平(龍谷大学),丸山敦(龍谷大学),大塚泰介(琵琶博)
マラウイ湖は、300種以上の藻類食シクリッド魚類が同所的に生息している。このような多種が共存する機構として、藻類のサイズや摂食角度によるニッチの細分化が考えられてきた。しかし、胃内容分析、行動観察、安定同位体比分析などはニッチの重複を示唆しており、どのように多種共存が成立しているかの議論は続いている。そこで、胃内容の珪藻組成に注目した新たなニッチ解析を試みた。消化されない殻をもち僅かな環境の違いによって種組成が異なる珪藻に注目することで、マイクロハビタットの推定が可能となる。本研究は、胃内容分析によって種間、湖内におけるシクリッド魚類近縁2属4種の珪藻の付着角度に対する摂食角度の利用頻度変異の解明を試みた。
分析には、2006年7−9月(乾期)に5箇所の岩礁沿岸帯で潜水捕獲された近縁2属4種Labeotropheus fuelleborniとL. trewavasae、Maylandia callainosとM. zebraを用いた。胃内容試料は実体顕微鏡下で機能分類群レベルの胃内容分析を行った後、光学顕微鏡下で珪藻の殻を400枚計数し、種組成を求めた。先の報告より得られた付着角度ごとの珪藻各種の相対出現頻度と胃内容の珪藻の殻数を用いて、最尤法により各個体の角度ごとの摂食割合を算出した。
機能分類群レベルの胃内容分析では、ほとんどの個体において体積率70%以上を付着藻類が占めていた。他に動物プランクトン、水生昆虫が含まれた。珪藻の種組成に基づく摂食角度推定では、同属内での重複が著しく、4種ともに摂食角度の割合が地域間で異なる結果が得られた(MANOVA)。安定同位体比分析の結果との整合性も議論したい。