ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-127
*萩原佑亮(京大院・農), 大園享司(京大・生態研センタ-), 保原達(酪農学園大・環), 久保田康裕(琉大・理), 北山兼弘(京大・農)
落葉分解は森林生態系の養分循環プロセスの重要な構成要素の一つであり、律速要因であるリグニンなどの難分解性物質の分解と共に議論されてきた。リグニンが分解されると落葉の白色化(漂白)がおこるため、落葉の漂白面積率はリグニン分解の指標となる。一方、皆伐などの森林施業は森林生態系において人為的撹乱と定義される。皆伐やその後の二次遷移が落葉分解に与える影響は、施業が養分循環プロセスに与える影響を知る上で重要であるが、皆伐の落葉分解への影響について、リグニン分解や漂白面積率まで調べた研究例は非常に少ない。
本研究では、落葉に漂白が出現するスダジイを対象に、スダジイが皆伐後の二次遷移の全ての段階において優占する沖縄本島北部やんばるの森において、皆伐後2年、若齢二次林、壮齢二次林、原生林の各遷移段階から落葉を採取し、遷移段階と落葉の漂白面積率の関係を調べ、さらにGLMにより環境条件や供給される落葉の化学性や土壌の含水率やpHの中から、最も漂白面積率に影響のある要因を調べた。初めに、落葉の漂白面積率は皆伐後2年でその他の遷移段階より小さくなることが示された。次に、GLMの結果、光環境と供給される落葉のリグノセルロ-ス指数(LCI)が選択された。皆伐後2年では他の遷移段階と異なり林冠が閉鎖しておらず、これが漂白面積率の抑制につながったと考えられる。これはGLMにより光環境が選択されたことからも妥当であると考えられる。また皆伐後の二次遷移は供給される落葉のLCIを変化させ、リグニン分解菌にとって利用可能な基質の組成を変化させる事により漂白面積率に影響したと考えられる。皆伐は様々な変化を通して炭素集積や養分循環に影響を及ぼすが、なかでも落葉のリグニン分解については、特に光環境や分解基質の変化の影響が重要である事が分かった。