ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-132
*今井伸夫, 北山兼弘(京大・農)
ボルネオ島熱帯低地の木材生産林では、自然林に自生する大径木を数十年サイクルで抜き切りする、択伐施業が行われてきた。この方法が持続的に行われるためには、伐採対象種のバイオマスが伐採後数十年で元の水準にまで回復することが前提となる。しかし、強度伐採によって大径木が大幅に減少してしまうと、種子散布が制限され森林の回復が遅れる可能性が高い。したがって、木材生産の持続可能性を予測するためには、樹木更新と伐採強度との関係を明らかにする必要がある。我々は、この地域の優占種群で主要な伐採対象であるフタバガキ科を対象に、実生の密度と伐採強度との関係について調査を行った。
サバ州デラマコットの混交フタバガキ原生林と伐採強度が異なる2つの択伐林(最近導入が進んでいる低インパクト伐採と従来型の強度伐採)に、2haプロットをそれぞれ設置し毎木調査を行った。2006年に2×2mコドラ-トを規則的に100個設置し、光環境の測定、フタバガキ科実生(高さ10cm以上dbh1cm未満)のナンバリングと同定を継続的に行った。原生林と低インパクト林の実生密度は、従来型林のそれよりもそれぞれ30倍、15倍も高かった。各樹種の実生密度に及ぼす要因を一般化線形モデルを用いて検討したところ、多くの樹種で、周辺(コドラ-トから10m以内)に生育する同種の親木(dbh30cm以上)の断面積合計が説明変数として選択された。一方、光環境は、ほとんどの樹種で説明変数として選択されなかった。以上から、種子供給源となる大径木の多寡、つまり種子供給量が伐採林内のフタバガキ実生の密度を決める主要な要因であることが分かった。