ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-133
平田亜弓・*露崎史朗(北大院地球環境)
オゾン層減少に伴う地表面到達紫外線(UV)量の増加が植物に与える影響が懸念されている。サロベツ湿原泥炭採掘跡地内の裸地において、初期侵入種であるミカヅキグサとヌマガヤの実生に、08年にUV遮光処理を、09年に遮光処理と湿潤処理を施し、(1)UV (UVA/B)防御機構、(2)乾燥との関係、(3) 2種間UV応答の相違、を調べた。実生を2ヶ月野外で生育後に掘り取り、バイオマス、クロロフィル濃度(Chl)、UV吸収率、アントシアニン(Ant)濃度を測定した。
08年には2種とも処理によるバイオマス変化はなかったが、09年にはミカヅキグサはUVBと被陰で、ヌマガヤはUVBでバイオマスを減少させた。湿潤処理によるバイオマス増減は認められなかった。ミカヅキグサは被陰により地上部により多くの資源を投資した。ヌマガヤは、湿潤区において地上部により多くの資源を投資した。Chlは、2年間を通じ2種ともにUVよりも可視光に対し強く応答した。UV吸収率は、ミカヅキグサではUVB、UV、被陰で減少し、湿潤処理により増加した。ヌマガヤは湿潤区でUVB遮光による減少が認められ、2種ともにUV吸収率はUVB処理に対し顕著な応答を示した。UV吸収率は、ヌマガヤの方が高く、ミカヅキグサではUVB、UV処理により減少した。Ant濃度は、ミカヅキグサはヌマガヤの1/3程度で、また、ヌマガヤではUV遮光処理により減少した。
ミカヅキグサは、UV吸収率を増加させUVの影響を回避するが、主なUV吸収物質はAntではなかった。ヌマガヤは、UV吸収率の変化は湿潤区でのみ認められ、土壌乾燥ストレスが緩和されればUV量変化に応答するが、降水量・日照等が大きく変化すればUV応答様式も変化する可能性を示している。Chl変化はほとんど見られず、UV(UVB)照射量が大きく変化しない限りは、実生段階でも成長阻害は回避できるものと考えられる。