ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-135
小谷二郎,石川県林試,小谷二郎
放置されたモウソウ竹林を周辺広葉樹林構成種による森林へ回復させることを目的として、3つの地域で竹林に対し間伐または皆伐を行い跡地での更新状況を比較した。今回は、伐採後1年間での樹木の当年生実生の発生消長を調査した。伐採前0.5-2.6%であった相対照度は、間伐区で11.9-27.3%に、皆伐区で61.7-85.1%にそれぞれ改善した。地域により若干異なった樹種が出現したが、主要な樹種構成は3地域で類似していた。皆伐区では、カラスザンショウ・アカメガシワ・ネムノキなどのパイオニア樹種のほか、母樹が近くにあったケヤキとクマノミズキなどが多数更新していた。しかし、皆伐区では乾燥と考えられる枯損や、一部の地域ではベニバナボロギクやダンドボロギクなど草本の優占被度が高いために実生の生育の妨げとなっている場合もみられた。それに対し、間伐区ではパイオニア樹種だけでなく、サクラ類、アベマキ、クリ、また一部ではモミジバフウなども多数更新し、生存率も皆伐に比べて高い傾向にあった。皆伐区では、パイオニア樹種のサイズがそれ以外の樹種よりも大きくなる傾向がみられたのに対し、間伐区ではパイオニア樹種とそれ以外の樹種のサイズに差がみられなかった。間伐区では皆伐区に比べて実生のサイズが小さくなる傾向がみられたものの、皆伐区に比べ乾燥による枯損や、草本やパイオニア樹種の成長が低く抑えられていたことが周辺広葉樹林構成種の実生の生存の高さに関係したと考えられる。以上のことから、放置竹林を周辺広葉樹林構成種による森林化を考えた場合の第一段階として、間伐は有効な方法と考えられた。