ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-140
*秋葉行雄(東京農工大・院・農),福嶋司(東京農工大・院・農)
荒廃した針葉樹人工林の広葉樹林化が全国で推進されているが、林種転換の技術はいまだ未確立であり、検討すべき点は多い。また、ブナ帯である高海抜地のカラマツ人工林を対象に、広葉樹林化について研究した報告は少ない。本研究では、高海抜地のブナ自然林とカラマツ人工林を比較し、カラマツ人工林の広葉樹林化に向けた情報を得ることを目的とした。
福島県会津地方の国有林において、ブナ自然林とカラマツ人工林に72のスタンドを設け、種組成と階層構造を記録し、高木性広葉樹の毎木調査を実施した。得られた植生調査資料を用いて表操作した結果、ブナ自然林とカラマツ人工林はほぼ共通した種群によって対応する3スタンド群に区分された。ブナ自然林、カラマツ人工林ともに、スタンド群のまとまりは標高と対応していた。対応するスタンド群ごとにブナ自然林とカラマツ人工林の種組成および階層構造を比較した結果、高標高域のカラマツ人工林で種組成が単純で階層の未発達なスタンド群がみられた。
ブナおよび他の高木性広葉樹の実生・稚樹・DBH≧5cmの個体は、低標高域のスタンド群で多くみられたが、その生育状況はスタンドのササの被覆率により異なっていた。ササの被覆率の高かった高標高域のスタンド群では、実生はほとんど無く、稚樹およびDBH≧5cmの個体がわずかにみられるのみだった。
以上の結果から、カラマツ人工林では植生タイプごとに高木性広葉樹の生育状況が一様ではないことがわかった。低標高域のササの被覆率の低い林分では生長した高木性広葉樹が多く、間伐による広葉樹林への誘導が容易と思われる。しかし、高標高域のササの繁茂した林分では、ササ刈りで実生の定着を図ることや、高木性広葉樹の植栽を行うなど、カラマツ人工林の潜在力に応じた施業計画を考案する必要があるだろう。