ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-158
*菅原鮎実, 浅井亜耶, 松田亜希子, 櫻なさ, 小島渉, 北村亘(東大・農), 山口典之(東大・農 / 長崎大・環境科学), 樋口広芳 (東大・農)
社会的一夫一妻の鳥類では、夫あるいは妻以外の相手と交尾し子を残すつがい外交尾行動がみられ、社会的父親の遺伝子を持たないつがい外子が巣内に混在する例が知られている。多くの鳥類は雌雄で子の世話をするが、血縁でない子の世話をすることのコストは大きいため、巣内につがい外子が含まれる場合、雄は給餌を削減することが報告されている。ところが、鳥類の雄はつがい外子を見分けることができないと考えられている。したがって、雄は巣内のつがい外子の割合と相関のある何らかの外的要因をもとに給餌量を決定することが理論的に示されている。しかしながら、これまで具体的な外的要因を特定できた研究はほとんどない。近年、ツバメにおいて、雌が社会的夫の配偶者防衛を振り切り、夫の傍から飛び去る行動が、巣内のつがい外子の割合を増加させることが示された。本研究では、このような雌の不貞さと関連する行動に着目し、それに応じて雄が給餌を削減する可能性を検討した。野外で繁殖期のツバメの行動を観察・記録し、雄の給餌頻度が、巣内のつがい外子の割合と、単位時間あたりに雌が夫の傍から積極的に飛び去った回数に受ける影響を調べた。その結果、雄の給餌頻度は、巣内のつがい外子の割合の増加および妻が自分のもとを積極的に離れる頻度の増加に応じて低下した。したがって、ツバメの雄は巣内のつがい外子の割合を妻のつがい外交尾追求の程度、すなわち、妻の不貞な行動をもとに評価し、それに応じて子の世話を削減していることが示された。本研究から、雄による子の世話に影響を与える外的要因として、雌の不貞な行動が有効な指標となる可能性が示唆された。