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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-166

寄生蜂の性フェロモントラップは可能?:アオムシヒラタヒメバチの性フェロモンと交尾時期

*板谷弘樹,上野高敏(九大院・生防研)


40’s後半から70’s前半まで,害虫防除のために多量の農薬が散布され,環境汚染・害虫の抵抗性誘導などの問題を引き起こした.問題意識の高まりから,70’s後半頃から解決策として化学的・物理的・耕種的,そして生物的防除を最適な形で組み合わせて行う総合的害虫管理(Integrated Pest Management; IPM)が提案された.さらに近年,生物多様性の保全意識が高まり,農地が多くの生物の生息場所となっていることが注目され,IPMを発展させた総合的生物多様性管理(Integrated Biodiversity Management; IBM)が提案された.これは害虫を含む生息生物の多様性を保全しつつ防除を行うというものである.IPMやIBM意識が広まり,多くの圃場で環境保全型農業が採られるようになったが,実際の圃場において天敵や中立の生物への農薬の影響評価が求められている.水田における農薬の試験天敵として有望なアオムシヒラタヒメバチItoplectis naranyaeを実際の圃場においてモニタリングすれば天敵やその他の生息生物への農薬の影響の指標になるが,簡便な方法が必要である.そこで雌の性フェロモン(sex pheromones以下S.P.)によって雄を捕獲する性フェロモントラップ法の構築を目指した.そのためにS.P.の有無・雌がS.P.を分泌する日齢・雄がS.P.に反応する日齢を調べ,その結果,雌はS.P.を持つこと,雌がS.P.を分泌する日齢は羽化後数日に限られること,雄がS.P.に反応する時期は日齢の影響を受けないこと,が分かった.これらから,S.P.の同定に際してのS.P.の抽出は羽化後間もない雌から行い,人工合成したS.P.の生物検定にはある程度の幅の日齢の雄を用いることが可能であると分かった.加えて,性フェロモンの存在・雌の分泌日齢・雄の反応日齢の適応的意義について考察した.


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