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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-172

半野生馬における集団移動の意思決定

*坪山佳織(総研大・葉山), 秋田優(串間市・教委),長谷川眞理子(総研大・葉山),沓掛展之(総研大・葉山,JSTさきがけ)


群れで生活する動物においては、集団の構成員全体で合意した意思決定(集団的意思決定)が行われなければ、その集団は移動に伴って分離する。集団内の個体それぞれが持つ社会的な背景と集団移動の意思決定、集団の安定性はどのように関わりあっているのだろうか。本研究ではウマ(Equus caballus)を対象として、安定性の異なる社会集団に着目し集団移動における意思決定の要因を探った。ウマは群れで生活する社会動物で、ハレムと呼ばれる比較的安定した繁殖集団と若雄群と呼ばれる流動的な独身雄集団の2種類の社会集団を形成する。移動における集団的意思決定の定められ方は、特定の個体が決める、多数決で決まる、個体それぞれの意思が最終的に一つにまとまる、のいずれかと考えられる。また構成員が流動的な集団の場合には、単に移動の意思を同一にする個体同士が一時的な集団を形成している可能性もある。過去の研究では、ハレムの移動開始は年長の雌や乳飲み仔を持つ雌によって行われる場合が多いことが報告されており、また追随する個体がなかった場合最初に動いた個体は移動をやめて集団に戻ってくるという。移動前の個体に着目した時、どの個体が移動を開始した時に追随を始めるかに偏りはあるか、また先に移動した個体からどれだけ遅れて移動を開始するかなどには、個体それぞれに異なる生理的・社会的背景が働いていると考えられる。宮崎県都井岬に生息する半野生馬のハレム群と若雄群を観察し、行動を記録した。得られたデ-タから、集団移動において移動開始個体に特定の傾向があるかを検証し、また残りの個体の追随の有無や順序、遅れに対して、年齢や血縁個体の移動状況、所属する集団、集団全体の移動状況と移動前後の行動が与える影響を検証した。


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