ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-195
*松木吏弓, 小林聡, 竹内亨(電中研・生物)
ノウサギは国内に広く分布する代表的な植物食動物で,森林の林縁や草地などの比較的明るい環境を好んで生息する。我々は,開発が進む千葉県北西部におけるノウサギの生息状況を把握することを目的に,82ヶ所の公園緑地を対象として2009年冬季にノウサギの糞センサスを実施した。ノウサギの生息は利根川流域および北総台地など主に北東部で確認したが,西部や湾岸など市街地に囲まれた地域では生息痕跡は確認できなかった。生息を確認した地点のうち都心に最も近く,生息域の周縁にあたると考えられる船橋市の調査地について,さらに詳細なノウサギ糞サンプリングを実施した。約13km2の範囲において,公園緑地のほかに点在する森林,耕作地,草地においてノウサギ糞を探索し,141サンプルを採取した。採取した糞サンプルよりDNAを抽出し,mtDNA調節領域およびマイクロサテライトDNAの解析から個体識別したところ,62個体を確認した。この地域は市街地に加え,鉄道や国道,水路によって周囲と分断されている可能性があり,周辺地域のサンプルの解析から個体の移動や遺伝的な交流について検討していく予定である。