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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-196

絶滅危惧?類クロシジミの遺伝構造

*竹内 剛(京大・生態研),清 拓哉(京大・生態研),高橋 純一(京産大・総合生命),椿 宜高(京大・生態研)


クロシジミは、幼虫前期にはアブラムシ類の甘露を舐め、幼虫後期にはクロオオアリの巣の中で餌を与えられて育つ。このような種は共生のために複雑な生息条件が必要になるためか、本種は日本各地で激減し、環境省のレッドリストでは絶滅危惧I類に挙げられている。このような共生関係を持つ生物種を対象に行う保全は、関係する他の多くの生物種の保全にもつながるため、生物多様性の保全に貢献すると期待して、クロシジミの保全を目的とした研究を始めた。

日本各地に残されたクロシジミの生息地を訪れて生息環境を見たところ、本種は山地の崖や人里近くの荒れ地など、半裸地的環境に生息することが分かった。これは共生するクロオオアリの生息環境によるものと考えられる。裸地の多くは遷移が進むと失われる。山地の崖などの一次環境は比較的安定だが、人里近くの荒れ地などはすぐに遷移が進むだろう。したがって、前者がソ-スポピュレ-ション、後者がシンクポピュレ-ションになるのではないかと考えて、地域個体群の遺伝構造を調べた。mtDNAでは日本各地の産地間の差異をある程度検出できたが、地域個体群間の遺伝構造を解析するには不十分だったので、これからマイクロサテライトを開発する予定である。


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