ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-209
*淀井智也, 宮川一志, 石川由希(北大院・環境科学), 北條賢(琉大・農), 三浦徹(北大院・環境科学)
集団で生活をする社会性昆虫にとって、フェロモンを介した個体間のコミュニケ-ションやカ-スト分化に代表される分業システムは、複雑な社会を制御する上で必要不可欠なものである。コミュニケ-ションに関わる化学物質であるフェロモンは、主に外分泌腺から分泌されており、社会性昆虫は単独生活の昆虫と比べると多様な外分泌腺を発達させている。しかし、シロアリ目における外分泌腺やフェロモンに関する知見は膜翅目昆虫と比べると乏しく、カ-スト分化に伴う外分泌腺、フェロモンの分化を調べた例は少ない。
異なるカ-ストはそれぞれ異なる社会機能を果たしているため、他個体とのコミュニケ-ションに使われる外分泌腺の形態や機能がカ-スト分化の際に変化すると予想される。
我々の予備観察では、オオシロアリHodotermopsis sjostedti のソルジャ-では、腹板腺上皮が著しく肥厚していた。腹板腺は道しるべフェロモンを分泌する器官として知られているが、ソルジャ-における機能は調べられていない。しかし、形態学的な違いから分泌される物質、ひいては分泌腺の機能が分化していることが示唆された。
本研究ではこのオオシロアリの腹板腺に着目し、カ-スト間での腹板腺の分子的な差異を検出するため、ソルジャ-とワ-カ-の腹板腺においてカ-スト特異的に発現しているタンパク質を二次元電気泳動法により解析することを試みた。その結果、ソルジャ-の腹板腺において特異的に発現量が上昇しているタンパク質が複数存在することが明らかになった。LC-MS/MSを用いてこれらのタンパク質の同定を行い、機能推定をすることで腹板腺におけるカ-スト間での機能分化の可能性や、シロアリの生態に与えている影響について考察した。