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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-219

ヤマトシロアリにおける個体間相互作用による兵隊分化を調節する因子の伝達

*渡邊 大,前川清人(富山大院・理工)


社会性昆虫に見られる行動多型を伴う表現型多型はカ-ストと呼ばれ,適切なカ-スト比の調節は社会性の維持に重要である。シロアリは巣の防衛を担う兵隊(ソルジャ-)カ-ストを持ち,ソルジャ-はワ-カ-の幼若ホルモン(JH)量が上昇することで生じる。巣内のソルジャ-比は多くの種で低く,個体間相互作用による分化調節因子の授受が示唆されてきたが,これがワ-カ-とソルジャ-間のどのような相互作用の結果起こるのかは不明である。ヤマトシロアリでは,ソルジャ-存在下でワ-カ-にJHを投与すると,約9日経過後にプレソルジャ-分化が起こるが,少なくとも5日後までにソルジャ-の影響がワ-カ-に伝わり,ワ-カ-のJH量が低下することがわかっている。そこで本研究では,ソルジャ-の効果の伝達をより詳細に明らかにするため,本種のJHを用いたプレソルジャ-の分化誘導系を用いて以下の解析を行った。

まずJH投与及びソルジャ-同居の有無によるソルジャ-及びワ-カ-の行動を,JH投与前から投与後5日目までビデオ観察した(n=3,各200分)。その結果,ソルジャ-の存在は,特にJH処理区においてワ-カ-間の接触行動を増加させた。次に有機溶媒によるソルジャ-の頭部及び胸腹部の抽出物と体表の洗浄物を用意し,JHと共にワ-カ-へ投与してプレソルジャ-の分化誘導率を調べた(n=5)。その結果,頭部抽出物と胸腹部抽出物を与えた実験区において,誘導率が減少する傾向があった。以上より,ソルジャ-分化調節の候補因子の産生はソルジャ-体内で起こり,ワ-カ-間の接触行動の増加によって集団内に拡散する可能性が示唆された。これにより,巨大な巣で圧倒的に個体数の少ないソルジャ-の影響が,効率よくワ-カ-に伝達されるのではないかと考えられる。


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