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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-222

ワレカラ属における第二咬脚の種間比較:メスは子を守るために武器を手にする?

*竹下 文雄, 和田哲 (北大院・水産)


武器形質は多くの動物で配偶者や資源をめぐる競争に用いられるが、多くの研究はオスの形質に着目したものであり、メスに着目した研究は少ない。海産甲殻類ワレカラ属のオスでは、配偶相手をめぐる競争に第2咬脚を使用する。この第2咬脚にはpoison tooth (以下、毒歯) と呼ばれる突起があり、その先端には孔が見られ、毒を用いた闘争が示唆されている。発表者らがこの第2咬脚を詳細に調べた結果、いくつかの種で第2咬脚の指節先端においても毒歯と同じような孔の構造が存在することを発見した。さらにこれらの構造はメスにおいても観察される場合があった。ワレカラ属では、メスが子を保護する種が報告されており、保護をおこなうメスは同種他個体やヨコエビ等の子の捕食者が近づくと激しい攻撃行動を示す。そこで発表者らはワレカラ属のメスが第2咬脚を子の捕食者に対する武器として用い、子を保護する種ではより発達した武器を持つと考え、メスの第2咬脚の構造および子の保護の有無について比較をおこなった。またキタワレカラ、イバラワレカラ、トゲワレカラの3種について毒歯および指節先端の孔の数を測定した。

観察の結果、11種中4種で毒歯に孔があった。また7種で指節先端に孔があった。キタワレカラの毒歯の孔は体サイズの増加とともに増加した。しかし、他2種では体サイズと孔の数に明確な関係は見られなかった。子の保護の有無が報告・観察されている8種で孔の有無を比較した結果、保護をおこなう6種全てで毒歯もしくは指節の先端に孔があり、保護をおこなわない2種ではいずれの場所にも孔の構造は観察されなかった。

これらの結果から、ワレカラ属のメスの第2咬脚は、子の保護をおこなう種で発達していることが示唆される。発表ではオスの第2咬脚の観察結果についても言及し、雌の武器の発達について考察をおこなう。


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