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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-223

トゲオオハリアリDiacamma sp. における触角形態の顕著な性差をもたらす発生学的基盤

*笹千舟 (北大・環境),宮崎智史 (北大・獣),東正剛,三浦徹 (北大・環境)


社会性膜翅目では生活史において雌雄の示す役割が大きく異なり,そのため顕著な性的二型が進化したと考えられる.中でも触角は,極めて顕著な性差を示す.触角は,一般的に,聴覚や嗅覚,触覚など,環境情報を得るために重要な感覚器官である.特に社会性昆虫では,触角による化学コミュニケ-ションを介して個体間の情報伝達が行われ,社会生活が維持されている.しかし,伝達される情報やその様式は雌雄で大きく異なると考えられる.雌は触角を他個体の体表に接触させることにより,その個体についての多様な情報(カ-スト,性,繁殖能力,巣仲間/非巣仲間など)を受容し,社会的な機能を発揮する.一方,繁殖期にのみ出現する雄は交尾を主な目的とすることから,触角は揮発性の性フェロモンの受容に特殊化していると考えられる.

本研究では膜翅目の中でも顕著な性的二型を示すことが知られるトゲオオハリアリ(Diacamma sp.) を用いて,触角性差をもたらす発生学的基盤を探ることを目的とした.トゲオオハリアリの雌は12節から構成される「く」の字型の触角を,一方雄は13節から構成される数珠状の触角を有する.まずは形態計測によって成虫触角の形態における性差を明らかにし,走査型電子顕微鏡を用いた外部形態観察及び組織切片による内部形態観察に基づいて,終齢幼虫から前蛹にかけての触角形成過程での性差を詳細に解析した.成虫では,雌の触角は第1節が2.45mmと他の節より極端に長く,雄は第1節 (0.25mm) と第2節 (0.097mm) が他の節より短いことが明らかとなった.さらに,前蛹初期の伸張したantennal budでも既に雌の第1節は極端に長く,顕著な性差がみられたため,それ以前に性差が現れることが示唆された.これらの結果を基に,本発表では触角性差の至近要因と触角形成機構について考察する.


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