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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-225

外来昆虫ブタクサハムシの移入地環境への適応:地域による光周性の違い

*田中幸一(農環研),村田浩平,松浦朝奈(東海大・農)


外来生物が移入地に定着し分布を拡大するためには,移入地の環境に適応しなければならない。移入地の環境は原産地とは異なるため,適応の過程で特性が変化することがある。北米原産の外来昆虫であるブタクサハムシOphraella communaは,1996年に千葉県で発見されたが,その後急速に分布を拡大し,現在までに沖縄県を除く全都道府県で発見された(初宿・守屋 2005; 守屋 私信)。このように急速に分布を拡大したため,本虫の移入時の生活史特性は各地域の気候や寄主植物のフェノロジ-に適しているとはかぎらず,移入後に生活史特性が変化する可能性がある。

演者らは2009年の大会で,茨城県つくば市における本虫の生殖休眠に関する光周性が,わずか数年間で変化したことを示した。この変化は,同地の環境に適応した結果であると考えられる。この仮説が正しいとすれば,他の地域に分布を拡大した個体群においても,それぞれの地域の環境に適応して,光周性が変化しているに違いない。このことを確認するために,気候や寄主植物のフェノロジ-が大きく異なる青森県弘前市と熊本県合志市で本虫を採集し,光周性の実験を行った。つくば系統において休眠を誘起する臨界に近い日長(13L:11D)で飼育し,休眠率(休眠個体の割合)を調べた。その結果,休眠率は弘前系統では87%,合志系統では7%と大きな違いがあった。この結果は,各地に分布を拡大した本虫の光周性は,各地の環境に適応して変化していることを示唆している。


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