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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-227

外来不快害虫ヤンバルトサカヤスデの生態特性

神谷貴文,飯田奈都子(静岡県環境衛生科学研)


ヤンバルトサカヤスデChamberlinius hualienensis Wang, 1956は,落葉等が堆積するなど有機質に富んだ湿り気のある場所を好む多足類である。11-12月に体長3cm前後の成体となり,生殖活動を行うため地表面に姿を現して群遊し,家屋に侵入するなど人々に不快性被害を引き起こす。原産地は台湾で,1983年に沖縄島で本種の生息が確認された後,南西諸島や鹿児島本土,八丈島に分布を広げ,近年では本州や四国でも局所的に確認されている。静岡県では,2002年頃から静岡市内で毎年異常発生がみられ,最近伊豆半島や浜松市で生息が確認されるなど,本州における一大生息地となっている。本研究では,静岡市内に生息する個体群について,現地調査や飼育試験により生活史や低温耐性,餌の嗜好性を把握し,移入地における本種の生態特性を評価した。

ヤンバルトサカヤスデは一年一世代型の生活史を持ち,孵化後7回の脱皮を経て成体になる。本調査地では一年を通して成体が出現しており,成体の群遊の時期も4月及び10月以降の2期に分散するなど,既往の報告にはない生活環を示した。飼育試験では,成体や卵塊が5-10℃の低温に曝された場合,生存率や繁殖能力,孵化率は低下するものの,その後の温度の上昇によってある程度回復することが示唆された。また餌としてみかんや茶の落葉を好む傾向にあり,本種の静岡市における分布状況と一致していたが,成体はスギや広葉樹も摂食し,嗜好に幅があることが確認された。以上のことから静岡県内では海沿いの広範囲でヤンバルトサカヤスデが生息可能であることが示唆された。なお,本研究では侵入起源の解明に向けてmtDNAの塩基配列変異に基づいた解析を実施しており,その経過に関しても報告する。


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