ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-229
*斎藤達也(北大院・環境),露崎史朗(北大院・地球環境)
撹乱地への外来植物種の侵入は,在来植物とは異なる質のリタ-の供給や,土壌動物群集及び非生物環境の改変を介して,リタ-分解過程に影響を与える.北海道渡島駒ケ岳の火山荒原上では,外来針葉樹のカラマツと在来広葉樹のカンバ類(ダケカンバ,シラカンバ)が優占している.本研究は,火山荒原上のリタ-分解に対するカラマツの影響を評価することを目的に行った.カラマツ樹冠下とカンバ樹冠下のカラマツとカンバの葉リタ-の分解はリタ-バッグ法により調べた.リタ-分解への土壌節足動物の寄与を評価するために,リタ-バッグの半数には10個の6mm穴を設けた.両種樹冠下の相対光量子密度,リタ-層の含水率,大型土壌節足動物の個体数(ピットフォ-ル法)も調査した.
両種の樹冠下において,カラマツリタ-はカンバリタ-よりも分解は遅かった.カンバリタ-はカラマツ下でカンバ下よりも速く分解した.リタ-バッグへの穴あけ処理の結果から,土壌節足動物はカンバリタ-の分解には寄与するが,カラマツリタ-の分解への影響は弱いことが示唆された.カンバ下と比べて,カラマツ下は暗く,湿潤で厚いリタ-層と,豊富な大型土壌節足動物により特徴づけられた.また,デトリタス食の等脚類はカラマツ下で,捕食者であるクモ類や甲虫類はカンバ類下で多く確認された.よって,カラマツの定着は,火山荒原上の水分や大型土壌節足動物の分布を変えているが,これらの環境改変はカラマツリタ-の分解には強くは影響しないと考えられた.カラマツは,難分解性リタ-供給により,火山荒原上のリタ-分解や養分循環を遅延させる可能性があると考えられる.