ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-230
伊原禎雄(奥羽大)
毛皮の取引のために北米から輸出されたアメリカミンクは、現在では世界各地で野生化し、在来生態系に深刻な影響を与える存在となっている。日本では北海道、長野、新潟、福島での定着が知られており、2006年からは環境省によって特定外来生物に指定され、積極的な個体管理が求められるようになった。そこで個体管理への基礎情報の一つとして、福島県郡山市内を流れる阿武隈川の支流の藤田川と谷田川で個体密度の推定を試みた。藤田川では中下流の2区域、それぞれ住宅が少ない1.8kmおよび1.5kmの範囲の区域で2009年および2010年の10月から11月にかけて全頭捕獲を試み、また谷田川では中下流域6.5kmの範囲で2010年の8月24日から9月3日までの内の7晩に、ワナ(ライブトラップ)20器を用い捕獲を試み、除去法にて個体密度を推定した。結果、藤田川上流区では2009年、2010年ともに5個体、下流区では2009年には2個体、2010年には7個体を捕獲した。ただし2009年の下流区では捕獲された個体以外2頭のミンクにワナを壊され逃げられてしまった。推定にはこの逃げられた個体も加えた。谷田川ではこの捕獲調査によってミンク28個体を捕獲した。この結果、藤田川上流区の1kmあたりの生息密度は2.78個体で、下流区の2009年は、2.67個体となり、2010年には4.67個体と推定された。また、谷田川の1kmあたりの個体密度は4.00?4.62頭と推定された。これらの結果から、この両河川の調査区域でのミンクの個体密度は他地域と比べてみても極めて濃密であることが示唆される。水田環境からの豊富な餌の供給がこうした濃密な個体密度の背景にあるようである。