ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-232
桜谷保之(近畿大・農・環境生態)
近年、外来種が世界的に大きな問題となっており、特に生物多様性や在来生態系に及ぼす影響が深刻化している。これら外来種の侵入後の定着と分布拡大には、種や環境条件等により、いくつかのパタ-ンが考えられる。生産者、1次消費者、2次消費者という3段階からなる食物連鎖を考えた場合、すべて在来種から構成される連鎖では、在来生産者→在来1次消費者→在来2次消費者という1つのタイプしか存在しない。しかし、こうした3段階の食物連鎖の少なくともどれか1つの段階に外来種が入ると、連鎖のパタ-ンは8種に増加する。これまでに、生産者、1次消費者、2次消費者ともすべて外来種からなる食物連鎖の例もいくつか知られている。例えば、南西諸島において、ギンネム(生産者)、ギンネムキジラミ(1次消費者)、ハイイロテントウ(2次消費者)という食物連鎖は、すべて外来種から構成されている。また、外来種の2次消費者フタモンテントウは在来のアブラムシも外来のアブラムシも捕食して分布を拡大している。外来種の1次消費者マツヨイグサアブラムシは数種在来テントウムシに捕食されている。
本研究では、少なくともどれか1つの段階に外来種の入った7種の食物連鎖のタイプについて、生産者(植物)、1次消費者としてアブラムシ、キジラミ、カイガラムシ、2次消費者としてテントウムシ類を中心にいくつかの例を挙げながら紹介し、その特性や生物多様性や生態系等に対する影響について考察する。