ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-233
*井上真紀,五箇公一(環境研),伊藤文紀(香川大・農)
アルゼンチンアリは、世界各地で定着し、侵入地において生態系や農業への甚大な被害を引き起こしている。日本では、1993年に広島県で定着が確認され、現在では関東以西11都府県で報告されている。本種は、複数の巣の融合体であるス-パ-コロニ-を形成し、女王やワ-カ-が自由に行き来し、同一ス-パ-コロニ-内では敵対行動を示さない。種内競争コストがかからないため、ス-パ-コロニ-形成によって生態的優位性を獲得したと考えられている。しかし、なぜこのような社会構造が進化し維持されているかは、社会性進化における大きな謎とされてきた。先行研究では、同じ遺伝子型を持つ1つの非敵対性ス-パ-コロニ-が世界中に広く侵入している一方、小規模な敵対性ス-パ-コロニ-が局所的に分布していることが明らかになった。そこで本研究では、4つのス-パ-コロニ-が側所分布している兵庫県神戸市において行動学的・分子遺伝学的手法を用いて、神戸市に分布するス-パ-コロニ-間における遺伝子流動の有無とコロニ-融合の可能性について検証している。これまでの結果から、ス-パ-コロニ-間でワ-カ-のオスに対する敵対レベルは低く、オスを介した遺伝子流動の可能性が示唆された。遺伝構造はス-パ-コロニ-間で有意に異なっているものの、低頻度で遺伝子移入が起きていることが明らかになった。また、ワ-カ-間の敵対レベルには季節変動があり、特に冬期では低く、コロニ-融合が起きる可能性が示唆された。さらに1つのス-パ-コロニ-が他のス-パ-コロニ-の敵対性レベルの変動と同調していた。