ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-248
*西原昇吾(東大・農学生命科学),須田真一(東大・農学生命科学),鷲谷いづみ(東大・農学生命科学)
侵略的外来種の侵入は淡水生態系の生物多様性を低下させる複合的な要因の1つである。淡水生態系の生物多様性を保全するためには、操作可能な個別の要因の排除が必要であり、侵略的外来種の及ぼす影響を明らかにした上で、生物間相互作用を考慮した計画的な排除が有効と考えられる。しかし、生物多様性の高い地域への侵入の初期において、侵略的外来種が水生生物に及ぼす影響を評価した研究は少ない。
本研究では、生物多様性の高いため池群に侵入したウシガエル(世界の侵略的外来生物ワ-スト100)が水生生物に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。
岩手県南部の丘陵地に位置する久保川流域には、生物多様性の高い約1000のため池が残存するが、2005年頃からウシガエルが侵入し、急速な分布の拡大を続けている。ウシガエルの侵入の有無による水生生物相の違いを明らかにするために、ウシガエルの侵入していない30ヶ所の池ならびに、侵入して数年以内の33ヶ所の池を流域全体から任意に選び、水生生物群集の調査を2010年に行った。その結果、コウチュウ目の種数は、ウシガエルの侵入していない池の平均4.6種に比べ、侵入した池では3.4種と有意に少なかった。また、この地域では、2009年に設立された久保川イ-ハト-ブ自然再生協議会による自然再生事業が進められており、ため池群におけるウシガエルの排除が2010年より本格的に開始されている。ウシガエルの侵入した生物多様性の高いため池では、アナゴカゴなどを用いた排除が実施されており、その際に捕獲されたウシガエルの胃内容を分析した結果、陸上のゴミムシやクモ類に加え、ゲンゴロウやガムシなどの水生生物が確認された。
以上により、ウシガエルは直接の捕食によって、生物多様性の高いため池の水生生物群集に影響を与えていることが示唆された。