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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-288

ホタル発光パタ-ンとnos遺伝子との関係

*大槻朝(東北大・生命科学), 横山潤(山形大・理), 大場信義(大場蛍研究所), 近江谷克裕(北大・医), 河田雅圭(東北大・生命科学)


生物発光は多くの生物がもつ進化・生態学的に重要な形質であり、ホタルでは個体間コミュニケ-ションや警告シグナルなどに利用されると考えられている。ホタルの種間や種内で発光パタ-ンは異なり、その違いは交配前隔離に働くことが示されている。異なる発光パタ-ンを生む要因の研究はホタルの進化を考える上で重要である。ホタル体内における明滅制御の仕組みの一つとして一酸化窒素(NO)が発光時の酸素供給に関わり光の明滅が起きるという説が提唱されている。NOが関連するのならNO合成酵素(NOS)の機能や量の違いが種間や種内での発光の違いをもたらす可能性がある。そこでホタル発光器のnos遺伝子発現を調べNOによる明滅制御の説を検証する研究を行った。夜行性でよく明滅するゲンジボタルとヘイケボタルでnosの発現を調べると、発光器および体の各部にnos発現があることが確認された。このnosが明滅の違いをもたらすのかを確かめるため、明滅周期に種内変異があるゲンジボタルでnos発現量を測定した。ゲンジボタル成虫の発光器でのnos発現量は異なる発光周期に対応したものでなく、活発に明滅を行う時間でも特に増減は見られなかった。このことから発光周期の違いはnos発現量の違いでは引き起こされないと考えられる。同じゲンジボタルでも明滅でなく連続的な弱い光を発する幼虫で測定すると、成虫とは逆に体の各部より発光器での発現量が非常に大きいことがわかった。また、ごく弱い発光の昼行性のオバボタルでもnos発現は確認された。したがってnos発現量が大きいことが周期的な明滅を生み出すとはいえず、むしろ発現が大きいことは連続的な発光につながる可能性があると考えられる。さらにこれまでに配列決定を行った数種の異なる発光のホタルnos遺伝子についても報告する予定である。


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