ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-291
*松林圭(北大・院環境), Sih Kahono(LIPI), 片倉晴雄(北大・院理)
適応放散は、生態適応に関連した形質がリネ-ジ内で急速に多様化する現象であり、生物が多様性を急速に増大させるホットスポットとして、古くから注目されてきた。適応放散が生じる際には、生態適応に関系する様々な形質の分化が認められ、それが生殖隔離と関連することによって種分化を促進していると言われている。しかし、適応放散には複数の形質が複雑に関係していることが一般的であるため、どの生態適応形質がどのように作用して連続的な種分化が引き起こされたかについては、ほとんどわかっていない。今回我々は、食植性テントウムシHenosepilachna diekeiを用いて、適応放散の際にどのような隔離要因が進化しているか調査した。このテントウムシは、インドネシアのジャワ島およびスラウェシ島でシソ科とキク科を利用するホストレ-スにそれぞれ分化している。分子系統解析の結果これら二つの島における食性の分化は、それぞれのレ-スの祖先集団が島間で地理的に分断された後に、独立に生じたことがわかってきた。我々は食性試験・飼育交配実験・網室を用いた観察によって複数の隔離要因の測定を行い、適応放散初期の集団間にどのような隔離が進化し、それがどれくらい集団を分化させるかを調査した。適応放散と隔離の関係について、現在までに得られている結果を紹介する。