ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-297
*土畑重人(琉球大・農)・森英章(自然環境研究センタ-)・長谷川英祐(北大・農)・佐々木智基(フマキラ-)・嶋田正和(東大・総合文化)・辻和希(琉大・農)
アミメアリPristomyrmex punctatusは,コロニ-内の全個体が単為生殖による繁殖と労働の双方を担う協力社会を形成しているが,演者らは遺伝的に分化した裏切り系統(大型で発達した卵巣を持ち労働を行わない)がコロニ-内に混在する集団があることを明らかにしてきた.アミメアリの社会構造は,上述のような裏切りの侵入に対して非常に脆弱である.また,裏切り系統の持つ表現型は,祖先種における(職型)女王のそれと一致しており,突然変異によって裏切り表現型が生じる発生学的基盤はアミメアリのすべての集団が潜在的に保持していることが期待される.すなわち,同様の表現型を持つ裏切り系統が,複数の集団で独立に起源している可能性がある.事実,裏切り系統と同じ表現型を持つ個体は日本各地から知られているが,この表現型が遺伝的に固定されたものなのか,祖先種の女王発生経路を可塑的に発現した結果なのか(一般に社会性昆虫のカ-スト決定は可塑的に制御されている)を明らかにする必要がある.本発表では,日本各地の集団から得られた「裏切り表現型」個体と通常個体とを,マイクロサテライトマ-カ-およびミトコンドリア遺伝子配列を用いて集団遺伝学的に解析し,「裏切り表現型」を持つ個体が同所的な通常個体と遺伝的に独立しているのか,そして異なる集団の「裏切り表現型」は平行進化によって生じたのかを検証した結果を報告する.