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ESJ58 シンポジウム S02-5

海岸緑化の技術的手法について

吉崎 真司(東京都市大・環境情報)


我が国の沿岸部において防風や防砂を主目的とした森林(海岸林)が造成されるようになったのは戦国時代の1573年以後であり、主には江戸時代に入ってからである。江戸時代には、日本中の多くの場所で先人達が苦労を重ねながら地域独自の方法で海岸林を造成していった。田中(1992)は、我が国における海岸砂防の資料は太平洋側よりも日本海側で多いことを記し、その理由として日本海側のほうが砂丘地が多いこと、日本海沿岸は侵食海岸であり、砂丘の内陸への後退が住宅地や耕作地を保護するための砂防を必要としたと述べている。このように、我が国の沿岸部に見られる海岸林の多くは防風・防砂のために人為的に造成された人工林が多くを占めている。近年、我が国の海岸林の多くはマツザイセンチュウ病に感染し急激に衰退しているが、衰退後の海岸林の姿をどうするのかという点について、各地で検討が行われている。すなわち、?抵抗性マツの植栽によってマツの海岸林を復元する、?マツ枯れリスクを回避するために、広葉樹からなる海岸林を造成する、?マツ林を維持するものの、林内に広葉樹を植栽してマツ枯れリスクを回避する などが主な検討内容である。また、生物多様性の維持や海浜植物の保護という視点から、海岸林の汀線方向への拡大による海浜植生の生育地の減少も懸念されているところである。発表者は、海浜部の地形や植生などの成帯性を考慮した緑地の造成を考える時期に来ており、その視点から海岸林の有り様を検討する必要があると考えている。また、近年の地球温暖化に発する海水面上昇に伴う砂浜の減少や山地流域からの土砂生産量の減少がもたらす海岸侵食に対する緑化工学的対応が求められている。シンポジウムでは、海岸砂防及び緑化工学という視点から海岸緑化の技術的方法について現状と課題を整理し、今後の海岸緑化についての考えを述べたい。


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