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ESJ58 シンポジウム S04-5

琵琶湖固有カワニナ類の遺伝的分化と吸虫感染耐性

浦部美佐子(滋賀県立大・環境)


カワニナ類は琵琶湖内で唯一のspecies flockを形成している。琵琶湖固有種(ビワカワニナ亜属)は、形態や核型の顕著な多様性などの特徴を共有しており,共通祖先から分化した可能性が高いが、系統についての研究成果は数件の学会報告にとどまっている.mtDNAは形態種とは関係なく非常に多様化しており,系統解析には使用できない(吾妻ほか、2003)。核DNAやアイソザイムの解析結果からは,ビワカワニナ亜属はハベカワニナ種群とタテヒダカワニナ種群とに分かれることが複数の研究者によって学会報告されている(野本・上島 2001、Kamiya & Shimamoto, 2008)。この2つの群の単系統性や、非固有種(カワニナ亜属)との関連性はまだ判明していない.さらに、rDNAのITS-1領域の解析結果では,ビワカワニナ亜属・カワニナ亜属ともに、過去に頻繁に二次交雑を起したとみられ,このことが系統解析を更に困難にしている。

カワニナ類に広く感染する吸虫の一種Genarchopsis goppoには、琵琶湖水系に少なくとも2つの隠蔽種(琵琶湖型と河川型)が分布する.ハベカワニナ種群は琵琶湖型に高い感受性を持つが,河川型に対しては抵抗性がある.タテヒダカワニナ種群はどちらの型にも中程度の感受性を持つ.どちらの種群も,G. goppoに対する感受性に地域差はほとんど存在しない.カワニナ亜属は琵琶湖型には耐性を持つが,河川型に対する耐性は個体群によって異なる.これらを総合すると,ビワカワニナ亜属は、形態や核型では多様であるものの、G. goppoへの感染耐性は亜属内ではほとんど分化していないが、カワニナ亜属はその逆であると考えられ、寄生虫への抵抗性の進化が亜属間で異なる可能性を示している.また、現在までのところ、二次交雑と感染耐性の関連性の有無は把握できておらず,今後の研究課題である.


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