ESJ58 シンポジウム S06-1
西川 潮(新潟大・超域)
野生生物の再導入は、鳥類や哺乳類の野生絶滅種もしくは絶滅危惧種を対象として、海外を中心として実施されてきた。例えば、ニュ-ジ-ランドでは、1998年までの間に50種以上もの鳥類が再導入されている(※)。一方、わが国では、国主体の再導入事業は、いずれも野生絶滅した鳥類を対象としており、2005年にはじめてコウノトリが豊岡市に、そして2008年にはじめてトキが佐渡市に再導入されている。海外における野生生物の再導入は、主に、欠損した生態系の構成メンバ-を補填することを目的としているため、野生復帰の実現性の高い無人島や原生林への絶滅種の復元そのものが中心となっている。それに対し、日本で実施されている再導入事業は、古くから生活に密接な存在である里地・里山が舞台となっているため、「生態系の復元」と「生態系と地域社会の繋がりの再構築」の双方が重要となる。
本発表では、国内外における野生生物の再導入や自然再生の動向を紹介し、日本流の自然再生手法の確立に向けた情報提供および問題提起を行う。
※McHalick, O. (1998) Translocation database summary. http://www.doc.govt.nz/upload/documents/science-and-technical/TSOP14.pdf