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ESJ58 シンポジウム S06-3

コウノトリを象徴種とした農地の再生

内藤 和明(兵庫県立大・自然・環境科学研)


2005年からコウノトリが再導入されている豊岡盆地では,水田が低地の広い面積を占め,主要な土地利用となっている.野生個体群が絶滅する前にはコウノトリが水田で採餌する様子が頻繁に観察されていた.再導入にあたっても圃場および水路などからなる水田生態系には,コウノトリの重要な採餌場所としての機能が期待された.このような背景から,減・無農薬,冬期湛水,小規模水田魚道の設置などの要素技術からなり,2003年に体系化の取り組みが始まったコウノトリ育む農法が,2010年には約220haで実施されているのをはじめ,環境保全型稲作が各所で実施されている.

2006年9月に放鳥された7個体を同年12月まで追跡調査した結果を用いて,採餌場所と環境保全型稲作との関係を解析した.その結果,水田での採餌に関しては環境保全型稲作を行っている圃場に近い場所ほど高い頻度で採餌に利用していることが明らかになった.放鳥から数ヶ月経過すると,飼育個体に与えられるものなど人為的な餌に依存する個体が増加したが,人為的な餌に依存しなかった1個体は冬期には水田地帯の排水路で採餌する時間が長かった.この個体は翌年6月には再び水田での採餌時間が増加し,年間を通じて主に水田生態系を利用して生息可能なことが示唆された.また,2007年に始まった放鳥個体による野外での繁殖の多くは水田地帯に設置された人工巣塔の上で行われ,親個体は巣塔周辺の水田をよく利用していた.


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