ESJ58 シンポジウム S11-7
加藤元海(高知大)
自然環境に対する人為インパクトの増大によって、多くの生態系で生物多様性が低下しつつある。日本列島には変種や亜種も含めると約7000種の維管束植物が分布しており、そのうちの約4割が固有種である。日本に生息する維管束植物のうち2割を超える種が、何らかの形で絶滅の危機にさらされている。絶滅危惧種の保全に関して、詳細な遺伝解析に基づく保全活動が展開されている例はまだ少ない。生物個体群の遺伝的特徴は絶滅危惧種の動態に対して大きな影響力をもつため、集団の遺伝的多様性や遺伝構造を知ることは絶滅危惧種の保全のために必要となる。本研究では、近年著しく発展した遺伝子解析技術によって得られた絶滅危惧植物の現存する全個体に関する位置情報、繁殖状況、遺伝子型を考慮した数理モデルを構築して、その個体群存続解析を行なった。個体群存続解析では、個体群の遺伝構造と地理情報に関しては小笠原諸島に生息するムニンフトモモをモデルに解析を行なった。空間構造を考慮した数理モデルを用いて、絶滅危惧植物のメタ個体群の持続可能性や脆弱性について総合的な解析を行なった。さまざまなパラメ-タを変えることにより、どのような生物学的特徴が絶滅リスクを高める要因になるかを解析し、生物多様性維持のために必要な管理の方針の助けとなることを目指す。