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ESJ58 シンポジウム S16-3

地方博物館が地域戦略策定に果たす役割?兵庫県の事例を中心に?

橋本佳延(兵庫県博)


ひょうご戦略は、1年1か月の準備・審議期間を経て09年3月に策定された。

地方博物館が戦略策定に関わる利点には、(1)必要な地域の生物情報の蓄積と整理を日常的に行っているために、策定時に速やかに情報が提供できること、(2)生物多様性を理解する人材を擁し、戦略担当者に密にレクチャ-することで素案作成が円滑に行われること、(3)ナチュラリストや研究者との日常的な情報交流を行っており県土の生物多様性の状況を可能な限り反映させられること、(4)行政組織であり、担当部局との協議・情報提供が密に円滑に出来ることや、(5)他部局事業の委員を担う館員が縦割り行政をつなぐ横糸の役割を果たせること等がある。

ひょうご戦略では、県担当部局の直接的な事業展開だけでなく、様々な主体がこの課題に取り組めるような環境を整えることを重視している。特に、(1)生物多様性の保全に関わる指標群やマニュアルの整備(分類群に加え生態系のRDB策定、外来生物ブラックリスト、生物多様性配慮指針など)、(2)生物多様性の取組を支援する体制の整備(アドバイザ-制度、生物多様性支援拠点の整備など)に重点を置いている。

地方戦略の課題には、(1)戦略担当部局は予算・施策への発言力に恵まれない場合が多い、(2)“保全”に偏り、“持続可能な利用”の視点が盛り込まれにくい、等がある。(1)の解決には、戦略の中に、環境分野以外の部局や県下の市町、企業や市民が生物多様性の課題に積極的に関われる・関わらざるを得ない仕組みを“戦略的に”盛り込む必要がある。(2)の解決は、「生物多様性を保全することが地域の活性化につながる」と実感できる具体的施策を提供することが求められる。博物館は、本業である環境学習支援の取組を通じて、その施策の実現に貢献する可能性を秘めている。


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