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ESJ58 企画集会 T03-4

ハクサンハタザオからイブキハタザオへの標高適応を担う生理機能と分子基盤

永野 聡一郎(東北大・生命)


多くの植物はその生活史のほとんどを固着状態で過ごし、一度定着した環境による制約を受け入れなくてはならない。このため、植物の形態的、生理的機能は彼らの生存にきわめて重要な意味をもつと考えられる。標高傾度は比較的短距離のなかで急激な環境勾配をもたらす。また、環境の厳しさ(例えば、風による撹乱、紫外線強度、低温)は通常標高とともに増す。これらのことから、標高による環境要因の変化は植物にストレス要因・さらに選択圧として作用すると考えられる。これまで、高標高の厳しい生育環境に適応していると考えられる様々な表現型(短い茎、厚い葉、高い紫外線や低温への耐性)が報告されてきた。しかし、これら適応的形質がどのようなプロセスを経て獲得されるのかについては、これまで十分に明らかにされてこなかった。講演者らは、モデル植物シロイヌナズナと同属の野生種ハクサンハタザオ(ハクサン:低標高型)と本種から近畿地方の伊吹山周辺の高標高へ分化しつつある生態型であるイブキハタザオ(イブキ:高標高型)を対象に、植物の標高適応をゲノムレベルから表現型レベルまで包括的に明らかにする事を目標として研究を行ってきた。本講演では、標高傾度に沿って生育するハクサンとイブキについて、?現地で生育した植物の形態から生理的レベルに及ぶ表現型解析の結果や、?標高とともに増加する紫外線に対する生態型間の耐性の違いについて紹介する。また、?同所生育下の植物で明らかになった低温耐性の差異と、現在解析を進めている低温耐性獲得過程での遺伝子発現についても発表する。


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