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ESJ58 企画集会 T05-7

総括

西田隆義(滋賀県立大・環境生態)


生物の分布やニッチ分割が、競争など生物間の相互作用によって決まることは、ダ-ウィンやウォ-レスによってすでに予想されていた。しかし、1980年代以降に「種間競争に対する疑念」は強まり、現在でも種間相互作用の役割はあいまいなまま放置されている。この講演では、排他的な分布を生じさせうる生態的相互作用にはどのような特性が必要なのかについて論じ、繁殖干渉がその主因であることを述べる。

自然生態系では、餌が余っている生物(植食性昆虫)でも餌不足に悩む生物(大形肉食者)でも、近縁種は共存しないことが多い。このことは、餌資源が決定的に重要ではないことを示唆する。そして、さらに相手種を駆逐するほど強い負の相互作用には、圧倒的な競争力の差か、少数派が不利となる「正の頻度依存性」のいずれかが不可欠である。近縁種はそもそもよく似ていて、圧倒的な競争力の違いはそもそも存在しない。さらに、資源をめぐる競争には「負の頻度依存性」がある。負の頻度依存性は共存のメカニズムであり、したがって、資源競争で競争排除を説明するのは無理なことが分かる。

資源利用にたえまなく自然選択が働くことを考えると、圧倒的な競争力の差が自然選択の結果生じることは不自然だ。むしろ、自然選択が働かない要因こそが重要かもしれない。近縁種でそれぞれ種内で働く性選択は、他種とはそもそも無縁である。近縁種が二次的に接触するとそこではじめて、性選択は意外な効果を発揮する。しかも、その効果には正の頻度依存性があるので、すぐに排他的分布が生じ、繁殖干渉を避けるように種内の性選択が働くことは難しい。

私は、同じ栄養段階にある生物群集では、このようにして一種の繁殖平衡が近縁種間でだけ成立し、それ以外の種間には弱い相互作用しかないと考える。この考えに基づき、生物群集について議論したい。


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