ESJ58 企画集会 T09-4
香月雅子 (岡山大・進化生態)
自分の子どもをより多く残そうとするオス間の競争は、交尾前でなく、交尾後にも生じる。これは精子競争(sperm competition)とよばれ、メス体内の受精をめぐる複数のオスの精子間の競争である。この競争はメスが複数のオスと交尾を行う種でみられ、精子競争に勝つために、オスは様々な戦略をとる。オスは、より多くの投資(例えば、精子数や交尾抑制物質)を繁殖に対して行う方が、自分の適応度は増加するが、一方で、過度の投資は寿命の減少などをもたらすだろう。繁殖への投資は、繁殖までに得た資源量に大きく依存するだろう。これは、成長期に得た資源で繁殖への投資量が決定してしまう種ではより顕著である。このように、繁殖形質と他形質とは大きく関係している。成長期の行動が異なるとき、それぞれ異なる環境をもたらし、繁殖にも影響を与えると考えられる。そして、それぞれ違った選択が働くだろう。
ヨツモンマメゾウムシは幼虫時にひとつの豆の中で発育するため、幼虫時に同じ豆内に他個体が存在するとき、資源をめぐる競争が生じる。この競争には他個体を噛み殺して資源を独占し、1個体のみが出現するコンテストタイプと、資源を共有し、複数の個体が出現するスクランブルタイプがある。この2つの資源獲得タイプは、繁殖をめぐる競争の程度が異なり、異なる選択をもたらす。ここでは、この資源獲得競争(繁殖期に至るまでの競争)がオス繁殖投資(繁殖期の競争)にどのような選択をもたらすか述べる。