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ESJ58 企画集会 T15-4

基礎自治体が実現可能な生態系管理のフレ-ムワ-ク

三橋弘宗(兵庫県立大・自然研)


生物多様性に関する事業は、これまでは国や県が主体となるか、各種団体の自主性による場合が多く、基礎自治体となる市町村の発案による独自事業は極めて少ない。つまり公的に実施できる事業量は、県や国の予算や職員数によって規定されているのが現状だ。将来的に、保全や再生に関わる事業量を増やすには、基礎自治体での取り組みに期待するのが一つの解決策である。基礎自治体は、地域固有の課題を把握しており、住民や各種事業者との距離が近く、意志決定が容易で、地域との協働が行いやすい。さらに、県や国が管轄する河川や森林、農地などの土地管理を伴う施策の予算や意志決定に参画できる立場にある。権限は限定的だが、様々な課題や生息場所を面的に扱うことができる。基礎自治体において、生物多様性の視点を盛り込んだ独自の事業を安定的に実行するには、地域のマスタ-プランとなる総合計画や環境基本計画に、事業目的と事業量、そのアウトカムを明記することが現実的な対応策となる。加えて、生物多様性分野以外への波及効果、例えば農業や地域振興、水源確保といった生態系サ-ビスを介したメリットを示せれば同意を得やすいが、現状では、そこまで踏み込んだ記述はほとんどない。もし、生態学者が市長や政策スタッフとなった場合には、まず、総合計画もしくは環境基本計画のなかに、明確な指標を設定し、その指標を実現するために必要となる施策群を位置づけることを挙げたい。こうした指標の設定では、生態系サ-ビス賦存量のように管轄する土地全体で集計した指標群と、保護区設定や自然再生や希少種対策などの特定地点での努力量を定めた指標群などを組み合わせることで、実現性を担保する事例を紹介する。こうした各種施策のアウトカム指標となる生物指標による検証やモニタリングのあり方についても事例を示し、生態学の理論研究と施策を関連づけるために必要となる新たな枠組みに関する試案を紹介したい。


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