ESJ58 企画集会 T19-1
久保田康裕(琉球大・理)
局所的な種多様性のパタ-ン形成は、主に、種間の相互作用や環境に対する種のニッチ適応で説明されてきた。一方、マクロ生態学的な種多様性パタ-ンの検出が進むにつれて、マクロ進化の地理変異のような歴史的プロセスが、今日の地域・局所的な種多様性の形成に大きな影響を持つことが認識されつつある。したがって今後の生物多様性研究では、種多様性のパタ-ン形成に対する歴史効果とニッチ適応効果の相対的な貢献度を分析することが要求される。本研究では、日本列島の生物群集を対象とし、第三紀後期から第四紀の気候変動に伴う陸橋形成や島嶼化が、生物多様性パタ-ンに及ぼす過程に着目した。日本列島内の地域間の生物種の入れ替わりを分類学的ベ-タ多様性と系統学的ベ-タ多様性によって評価し、環境条件、地理的距離に伴う分散制限、地理的ギャップによる分断効果が、種多様性の空間変異に及ぼす効果を定量した。東アジア島嶼の生物群集は、気候的な移行帯に位置し、歴史的に大陸の生物群集をソ-スとして形成されてきた。よって、島嶼間の生物群集の種多様性の空間変異は、気候環境に対する種のニッチ適応と地理的イベントによる種の移動や種の多様化が影響していると予想される。この過程を、分類学的ベ-タ多様性と系統学的ベ-タ多様性のパタ-ンの比較に基づいて議論する。