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ESJ58 企画集会 T22-1

時間軸からみる生態系の構造

*陀安一郎(京大・生態研セ),杉本敦子(北大・地球環境)


陸上生態系における炭素動態は、生産生態学的な視点から多くの研究が行われてきた古典的な課題であるが、近年の二酸化炭素濃度上昇および地球温暖化の問題を受けて新たな視点での研究が必要となっている。生態系の炭素循環は、植物による無機炭素から有機炭素への変換に始まる。固定された有機炭素化合物は、最終的には生物圏の代謝を経て無機炭素へと分解されるが、それには時間的遅れ(タイムラグ)が存在する。本企画集会では、生物圏における種々の現象を、炭素固定からの時間をパラメ-タにして考察する。

本発表においては、時間的遅れを扱う手法として、各種安定同位体比と放射性炭素14の天然存在比を組み合わせたアプロ-チの可能性について紹介する。時間的遅れ現象は、生態系に見られる安定同位体比の時間変化から追うことが可能である。自然存在比だけでなくパルスラベリングを行うことによりラベルされた物質を追うことも可能で、様々な場面で応用が可能である。加えて、放射性炭素も直接的に生態系における時間の情報を得る有用な方法である。放射性炭素14は約5730年の半減期を持つ放射性同位体で、自然界の時間軸のパラメ-タとして利用されている。また、冷戦時の大気核実験で放出された放射性炭素14は、化石燃料の放出、海洋への溶け込みと生物圏の光合成固定により、現在に至るまで単調に減少してきている。

これらの手法を用いて、炭素が固定された年代を生態系の中に明示することにより生態系の構造と炭素循環をつなぐ研究の可能性について検討を行う。


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