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2009年5月発行ニュースレター (No.18) 掲載
永田尚志(大会企画委員会前委員長)
日本生態学会盛岡大会も大成功のうちに終えることができました。盛岡市内から会場が遠いため心配していた交通の問題も、幸い降雪がなかったことと、鉄道とバス会社各社の増便によってトラブルはなかったと思います。県立大学から1kmほど離れた行先のバスに乗ってしまった参加者を、事情を知った運転手さんが県立大学まで連れて行ってくれたというエピソードもありました。広い会場で迷わないように、会場案内の方が会場には配置されていて、岩手の方々の暖かい配慮が細部まで行き届いていました。大会の成功は、大会実行委員会の組織化されたすばらしい運営、会員・参加者のみなさまのご協力の賜物です。大会企画委員会を代表して御礼を述べさせていただきます。
生態学会大会は、現地の大会実行委員会と、学会の常設委員会である大会企画委員会が協力して運営や準備を行っています。大会実行委員会は会場の準備、会場設営、大会会計等の現地の大会運営の実務を担当すると同時に、開催地に密着した企画を行っています。今回は、盛岡企画と銘打って生態学者が未来に残したい森羅万象の写真展「エコフォトアワード2009」、岩手生態学ネットワークによる展示、絵はがき販売等が行われていました。絵はがきの収益は、盛岡で行っている生態学市民講座の活動資金として利用されることになっています。大会企画委員会は、シンポジウム企画のサポート、各種集会の選定、一般講演・集会の時間割の作製、ポスター賞の運営、長期的な大会のあり方の検討等を分担しています。このように、大会実行委員会と大会企画委員会が両輪となって大会は運営されています。
本ニュースレターの「大会案内」にありますようにすでに東京大会の準備が始まっていますので、前大会企画委員会の立場から盛岡大会を総括したいと思います。精確な集計は届いていませんが、地方で開催されたにもかかわらず盛岡大会の参加者は1800名を越えたと思われます。参加者数と一般講演1040題(口頭発表:178,ポスター:862)こそ前回の福岡大会には及びませんが、集会数が公式集会60(シンポジウム24,フォーラム5,企画集会31)に自由集会27を加えた合計が87と過去最大に達しました。盛岡大会の開催された県立大学の会場では、集会のための部屋数は十分に確保できるものの各教室の定員がそれほど大きくないので集会の併走数を増やして収容できる様にするという方針で提案された集会はすべて開催することができました。そのため、類似した集会が重複してしまうので集会数を制限して調整してほしいという意見も大会後に寄せられています。しかし、自由な形式の研究集会(企画集会・自由集会)は新しい研究課題を発展させる機能を果たしていると思います。新しい研究のシーズの源になっている発表の場を確保するため、大会企画委員会では会場に余裕のある限り、受け入れ集会数に制限を設けるつもりはありません。
現在、大会で開催される集会は、シンポジウム、フォーラム、企画集会、自由集会の4つの形式があります。大会参加者のなかにはシンポジウム、企画集会、および自由集会の違いがわからないという意見もありますので簡単に説明をしておきます。シンポジウムは大会で開催される集会で最も重要な学術集会と位置づけています。大会企画委員会のシンポジウム部会で提案を吟味して重複がある場合は調整を行いコーディネーターをつけてサポートしています。コーディネータの役割は、論文投稿の際の編集者のようなものでシンポジウムがうまく機能するようにアドバイスを行っています。フォーラムは、生態学会から会員へ情報を届ける役割を果たしていて、各種委員会から提案されます。盛岡大会でも、学術振興会の科研・特別研究員の採択の仕組みや若手のキャリアパス支援等、若い会員に聞いてほしかったフォーラムが開催されました。
近年、自由集会が盛んに行われるようになり集会数も増加してきたため、自由集会の一部を公式行事として組み込むために福岡大会から企画集会を設けました。シンポジウムと違って企画集会の企画・内容はすべて提案者に任せていますので、大会企画委員会では内容については関与しません。そのため、企画集会はシンポジウムと差別化するために開催時間は若干短くなっています。自由集会は大会に付随して開催される非公式行事という位置づけで、大会企画委員会としては会場枠を準備するだけに過ぎません。企画集会は公式行事の記録として発表内容を講演要旨集に残しますが、自由集会は開催記録のみ残し、各発表内容の記録は一切残しません。また、公式行事である企画集会は大会期間中のコアタイムに組み込まれて開催されますが、非公式行事である自由集会は初日や最終日等の大会期間の周辺の公式行事が行われない時間帯に配置されることが多くなります。さらに、集会への参加資格にも差があります。公式行事である企画集会には大会登録をした方しか参加できませんが、非公式行事である自由集会には大会登録者以外の誰でも参加できます。大会企画委員会では、東京大会でも盛岡大会と同じ集会の枠組みを維持する予定です。
一方、一般講演を見てみますとポスター発表の比率が高くなり、口頭発表の比率が年々減少しています。今回は、会期中に盛岡駅前で公開講演会と自由集会が開催され県立大学の会場が丸1日使えなかったため、ポスター発表をいつもより少ない2回に分けて行いました。ポスター会場として県立大学の200mを越える長い廊下を確保できたため一度に大量のポスターを余裕を持って展示できました。そのため、ポスターをゆっくり見る時間が足りなかったという意見が届いています。また、一度に大量のポスター審査を行う必要があったため、審査員の数が不足してしまう分野もありました。会員の皆様がポスター賞の審査を依頼された場合、快く引き受けていただければ幸いです。今後、ポスター発表が増加しても1日に閲覧・審査できるポスター発表数は、今大会程度が限度のように思われます。ポスター賞の審査数を減らすため、過去に最優秀賞を受賞した方の応募を遠慮してもらったり、発表者の年齢等の制限を行うことも検討しています。将来的に発表数が増加した場合、ポスター発表から口頭発表へと回っていただく場合もあるかもしれません。今後、口頭発表を奨励するための方策も考える必要もあります。
盛岡大会では、若手支援の一環として将来計画専門委員会から要望のあったキャリアエクスプローラーマーク(CEマーク)の表示を始めましたが、CEマークの説明がニュースレターのみの掲載であったためか使用者はそれほど多くありませんでした。次回からは大会プログラムにも掲載して定着をはかりたいと思っています。また、講演要旨集の電子化を見据えて、CD版の講演要旨集300枚と携帯電話で閲覧可能な要旨集のホームページも用意しました。CD版要旨集は希望者に配布予定でしたが、東京から盛岡まで2時間半で来れる利便性のためか、当日参加の方が予想以上に多くなり要旨集が不足する事態が生じたため初日しか配布できませんでした。携帯版要旨集のQRコードの宣伝不足のためか、会場で使用されている方は少ないようでした。
大会の規模が大きくなり参加者が増加するにつれて大会を開催できる会場が限られてきています。そのため、今後、使用料の高い国際会議場を利用することが多くなってくると予想しています。また、講演数の増加に伴って要旨集も厚くなり、要旨集に使用する紙の重量も2.5トンを越えるようになってきました。大会企画委員会では、今後、要旨集を完全電子化して要旨集にかかる経費を削減するとともに森林資源の節約を行いたいと考えています。そこで、講演要旨集の電子化に向けて、冊子体の講演要旨集の利用実態と必要性を大会参加者の皆様にアンケートをお願いいたしました。Web上のアンケートで299名、大会会場で93名の合計392名の方から意見を回収することができました。紙面を借りてアンケートに協力して下さった方にお礼を申し上げます。アンケート結果の詳細は最後に掲載してあります。
結果を見てみますと、約4割の方が大会終了後も要旨を利用していて、約1割の方が冊子体の講演要旨集が必須と答えていました。また、将来、要旨集をオンライン版のみにすることに反対を表明した方は2割に達しました。大会会場でのアンケートでは、将来の完全電子化にWebでのアンケート結果より多い25%の方が反対していましたが、有意差はありませんでした。反対理由として、大会後の社内報告や所属機関に発表の証拠として報告するために冊子体が必須という意見、講演内容のメモ書きに冊子体の方が便利という意見が寄せられました。また、完全電子化に賛成されている方でも3分の1は編集済みのPDFを希望しています。編集済みのPDFの作成には冊子体と同じ額の編集費が発生しますので、編集費を捻出する必要があります。完全電子化に賛成していただいた方から、講演要旨を掲載する恒久的なウェブサイトの確保が指摘されていました。当面は、学会事務局と協力して日本生態学会の独自ドメイン(esj.ne.jp)を長期的に維持し、大会記録と一緒に電子版要旨集を収録する予定ですが、将来的には恒久的な場所に要旨集を残す方策も検討する必要があると考えています。大会企画委員会では、2割強の方が完全電子化に反対していることと、所属機関・会社への報告に冊子体が必要な方がいることに配慮して完全電子化を先送りすることにしました。しかし、全員に配布して紙資源を2.5トン浪費することはやめたいと考えています。そこで、東京大会ではプログラムのみは全員配布とし、講演要旨集は希望者のみに配布する方向で検討しています。今後も電子化に向けての課題はいくつか残っていますが、大会企画委員会で検討していく予定です。
ニュースレターNo.15で 齊藤元委員長が述べた ように、大会の規模が年々、大きくなってきています。盛岡大会は地方での開催でしたので、福岡大会より若干参加者数は減少しましたが、来年の東京大会では大会参加者が2000名をはるかに越えてしまうことが予想されています。2000名規模の大会をボランティアによる手作りで運営するためには、大会運営の省力化のために大会参加者の協力が必要となります。大会の運営に協力していただく第1歩は「締め切りの厳守」です。詳細は 「締め切り厳守をお願いする理由」について、大会ホームページ をご覧ください。
大会企画委員会は宮竹貴久新委員長のもとで4月から49名が運営部会、広報部会、シンポジウム部会、ポスター賞部会、発表編成部会に分かれて大会の準備に関わっていきます。大会企画委員会で検討しなければならない課題はまだまだ山積みですが盛岡大会の成果と課題を受けて、よりよい大会の実現を目指して検討を深めて参りますのでよろしくお願いいたします。
(2009-03-23 まで, 392 名回答 内紙ベース93 件)
【1】 大会後、紙媒体の講演要旨集を利用することがありますか? ・ よく利用する 29人 ・ たまに利用する 126人 ・ あまり利用しない 168人 ・ 利用しない 69人 【2】 「よく利用する」または「たまに利用する」と答えた方にお聞きします。 あなた 自身は紙媒体の講演要旨集をどのように利用するか、具体的に教えてください。 (省略) 【2B】その利用に紙媒体が必要ですか? 電子媒体で代用できませんか? ・ 紙媒体が必須 28人 ・ 電子媒体でもよい 201人 【3】 講演要旨集の電子化についてお聞きします。 紙媒体の講演要旨集を廃止し、電子版のみとすることに賛成ですか? ・ 賛成 354人 ・ 反対 44人 【3B】反対の理由 (省略) 【4】 講演要旨集を電子版で提供する場合,どのような形態を希望しますか?(複数選択可) ・ CD 配布(PDF 版) 106人 ・ CD 配布(HTML 版) 63人 ・ オンライン版(含 携帯対応版) 260人 ・ その他(【4B】内容:別紙) 34人 【5】 大会会場に要旨閲覧用コンピューターを用意するなどしたうえで, 将来的に オンライン版のみとすることに賛成ですか? ・ 賛成 308人 ・ 反対 79人 【6】 その他、プログラム・講演要旨集に関してご意見があればご記入ください。 (省略)